入学後はじめての微分積分学の中間試験の範囲で,初出で理解が難しいのが,逆三角関数とテイラー・マクローリン展開です.

逆三角関数,たとえば,逆正弦関数を理解するには,まず,正弦関数:y=sin x のグラフを描くとよいです.正弦関数は横軸からxを入力して,縦軸にy=sin x を出力として得る順方向の対応です.逆正弦関数は縦軸からyを入力して縦軸にx(= sin-1 y)を出力として得る逆方向の対応です.

逆関数の理解の困難さは,「逆の対応である」ことをグラフを使って理解する前に,「xとyを入れ替えて,yについて解く」という計算手続きに馴染んでしまうことが原因です.実は,「xとyを入れ替える」のは,入力のラベルがxの方が安心という程度の心理的ことで,本質ではありません.実際,上に記したように、縦軸のyを入力としてよいし,この方が理解しやすいです.関数の入力と出力のラベルは何でもよい,対応関係だけが大切ということが理解できると逆三角関数,逆関数は安心して扱うことができます.

テイラー・マクローリン展開とは何でしょうか?みなさんは,複雑な曲線の短い断片を接線で近似できる感覚はもっているでしょうか?もし,もっているなら,接点近傍を2次関数を使って正確に近似する,3次関数を使ってより正確に近似するというのは自然なアイデアです.

偉大な数学者も人間ですので,私たちの思考の営みで自然に理解できることもあります.「もっともだなあ」,とか「自然な考えだなあ」,と思える体験的知識を増やしておくことは,みなさんが将来,エンジニアになったときの知的資産;論理的な思考を支える力になります.