学問的興味をもつことは,人生の楽しみを増やしてくれます.試験/レポートも大切ですが,少し道草できることも,自由な大学生の特権です.相対性理論,量子論,熱力学,電磁気学などの開拓者は,案外人間らしい感覚からその端緒を得ています.そのような開拓者と自分が同じ地平にいることがわかると将来の可能性が広がります.

例えば,アインシュタインの特殊相対性理論の根本は,物理や数学の専門的知識ではなく,現実 を認めて受け入れる素直な心(光速不変の原理),立場が違っても平等であるという平らな 心(相対性原理),という日常生活でも備えていることが望ましい心でした.このことは私 たちが Einstein に惹かれる理由かと思います.

そのような心から出発して,私たちが日常でなじんでいる時間と空間の概念 が正確ではなく,同じ機能の時計と物差しを用いても立場によって, 時間間隔, 空間間 隔の測定値が異なることを説明し,質量とエネルギーの等価性をゴールに説明しました. 

偉大な功績も案外,人間らしい心から出発しています.このことがわかるとなんとなく嬉しいし,何か自分にもできる気がしてきませんか?

[参考文献]A.Einstein, 相対性理論 (岩波文庫,1988) それはアインシュタインの論文で,それはいかに人を惹きつけてわかりやすく伝えるかの努力をしたものでした.ノーベル賞をもらってもおかしくなかった内山龍雄先生が,日本の学生にアインシュタインの姿勢を伝えたいという思いで訳されたものです.1,000円以下ですが,もっともわかりやすい本だと思います.この論文では,質量とエネルギーの等価性については述べていません.