論理を大切にする大学数学では,例えば,微分の前にその定義に使う極限について高校より詳しく勉強します.計算としては極限の方が微分より難しいと感じる学生さんは多いのですが,論理の流れとしては微分より「上流」にあり,極限を理解してから微分を理解しましょう,というのが数学の姿勢です.必ずしも簡単なものから順番に勉強する,というわけにはいきません.

この困難を乗り越えるためには,いっぱい練習をして慣れるのがよいです.熟練すると極限の式を見ただけでおおよそ答えの見当が付くようになります.大切なのは自分で体験して理解する,体験的知識を獲得することです.フィロスにはそれをサポートする教材があり,教員がいます.

理解済みと思っていることも,体験的理解をし直すと他のことに使えるようになります.例えば,(1) 関数:y=x^3のグラフを描き,グラフをつかって,その逆関数がx=y^{1/3}と体験的に理解すると,(2) 同じようにグラフをつかって指数関数:y=e^xの逆関数がx=log y であることを理解できます.(3) さらに,お内容にグラフを使って三角関数:y=sin x の逆関数が存在するはずだ,それを x=sin^{-1} yと記す約束であることを理解します.(1),(2)は高校数学,(3)は大学数学ですが,同じ視点で理解すると印象に残り,将来,エンジニアになったときいつでも使える知的資産になります.

体験的理解には時間と少しの忍耐が必要です.大学生のいま体験的理解をする努力により,将来の困難が小さくなり可能性を広げます.